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2013年5月

2013年5月19日 (日)

核融合科学研究所へ見学に行きました

5月17日(金)、かねてから告知しておりましたように、核融合科学研究所へ見学に行ってまいりました。

当会のメンバーを始め重水素実験に疑問を持つ市民が約20名、土岐市下石町にある核融研ロビーに集合しました。
見学は小森所長による重水素実験の説明に始まり、質疑応答、所長への質問書提出、そして建屋内に入り実験に使われる装置とその地下にあるトリチウム除去装置の設置場所を見学しました。


Kakuyuken_kengaku

1回の実験で発生する中性子とトリチウムの最大値は

60~80keVで重水素中性粒子ビームを1.5秒入射 = 中性子 2.9×10の10乗個(290億個)
                                 トリチウム 5千万ベクレル

となり、公表されている数値より小さくなったということです。
(入射時のエネルギーが少なくなり、さらに入射時間が短縮されたため)
中性子の量は10の6乗分も少なくなっているのですが、
「それは微量ですか?」という質問に対して小森所長は「微量ではない」と回答されました。
研究所は一貫して「発生する中性子の量は微量である」と説明してきましたが、そうではないということです。


Beam
          建屋内。左のオレンジ色の機械がビームを入射する装置

また、その中性子を遮へいする建屋の壁も、横は2mありますが天井は1.3~2.6mとデコボコの構造になっています。
斜めに入射するため十分な厚みがあるとの説明でしたが、真下から飛んできた中性子を遮る壁は1.3mしかない場合もあり、なぜそのような構造にしたのか謎です。


Tenjou
                         建屋の天井

新たに設置する除去装置は、トリチウムだけを除去するものではなく、
真空状態のヘリカル装置から出てきたトリチウムを酸化させてトリチウム水(放射能を持った水)にし、除湿剤で除湿するということです。
十分吸湿したところで除湿剤を熱し、トリチウム水を蒸発させて取り出し、容器に保管してアイソトープ協会に渡します。
「除去装置」というより「除湿装置」と改名すべきかも知れません。


Jyoshituki
     トリチウム除去装置が設置される場所(太いパイプを切断し、そこに取り付けます)


トリチウムの被ばくについての質問も出ましたが、「学者の意見は色々あって信用できない」と一蹴されてしまい、今までの説明の繰り返しに終わりました。


Tateya
              建屋。右の煙突状のものが排気塔です。


Shitumon1
Shitumon2

2013年5月 9日 (木)

連休中のビラ配布

「核融合を考える友の会」が連休中の5月6日(月)に多治見と土岐でビラ配布を行いました。

東濃は優しい人が多いのか、受け取ってくれる人や置いてくれる店が
たくさんあったそうです。
こうやってどんどん広がっていってくれればいいですね!
中日新聞 5月8日(水)(7日が休刊日だったため)
58_chunichi_thono

「核融合を考える友の会」と全く同じ名前を使った推進派のブログができています。
これも活動が順調に進んで知名度が上がったおかげと思いますが、
勘違いされては困るので、お知らせしておく必要があると判断しました。
「核融合を考える友の会」には公式ブログはありません。
当会が紹介という形を取っております。
ニセモノにはご注意をお願いします。




2013年5月 6日 (月)

5月17日 核融合科学研究所の見学に行きます

以下の予定で土岐市にある核融合科学研究所の見学に行きます。
小森所長自らが案内をしてくださるということです。

研究施設を実際に見たいと思っておられる方、
質問してみたいことがある方、一緒に見学しませんか?

5月17日(金) 15:00 核融合科学研究所 正面玄関を入ったロビーに集合
(見学は15:30からです)
見学内容:今後の実験計画の説明を受ける
       トリチウム除去装置の設置場所と加熱装置の改造箇所の視察
       質問書の提出
質問は井上までお願いします。
FAX:0572-29-1096


また、質問書の提出団体を募集しております。ご応募ください。
よろしくお願いいたします。


アクセスは以下のリンクより
http://www.nifs.ac.jp/michi/index.html
〒509-5292 岐阜県土岐市下石町322-6

TEL:0572-58-2222  FAX:0572-58-2601

2013年5月 4日 (土)

「東濃リニアを考える会」との交流会議

2011年5月、国土交通省はJR東海に建設主体と営業主体を担わせる「中央リニア新幹線計画」を決定し、建設指示を出しました。

名古屋と東京を40分で結ぶ夢の超特急と呼ばれるリニア新幹線ですが、ほとんどが地中のトンネルとなるルート(286Km中256Km)は日本最大と言われる東濃地方のウラン鉱床を通るため、大量のウラン残土が出る可能性があります。
技術的にも様々な問題のあるリニア、そして核融合の知識をお互いに深めるため「東濃リニアを考える会」との交流会議を行いました。


本日分かったリニアの問題
・推進派が多数を占める評価委員会でのお墨付きで出したGOサイン
 中央構造線を通るにも関わらず、地震にも大丈夫という根拠のない安全神話
 (原発の構図と同じです)
・強力な電磁波が発生するため線路脇に緩衝地が必要だがJR東海の計画では予定されていない
・莫大な電力を消費する(新幹線の5倍ほど)ため、原発依存を前提としている
・山梨実験線のトンネル工事の影響で河川や井戸の枯渇が発生している
・予定ルートには東濃地域固有の植物「ハナノキ」「シデコブシ」の群生地がある
・資材搬入、残土搬出のため直径30mもの縦坑を5~10キロ間隔で堀り開業後は事故時の脱出口として使う。停電した中、最大5キロも歩かねばならない
・ウラン鉱床は掘ってみないとどこにあるか分からない。どうやって避けるのか?

JR東海は5月25日(土)13:30~15:00、多治見市産業文化センター大ホールで「中央新幹線計画の説明会」を行います。
以下からの申し込みが必要。

また「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」では、7月28日(日)13:30~16:30、東美濃ふれあいセンター・歌舞伎ホールにて「リニア・シンポジウム・イン中津川」を開催します。
広瀬隆さん講演 「脱原発社会にリニアは必要か!」
糸魚川淳二さん講演 「リニア予定地(東濃)の地質とシデコブシ自生地」
パネラー   糸魚川淳二さん(名古屋大学名誉教授・理学博士)
パネラー   広瀬隆さん   (脱原発ジャーナリスト)
ディネーター 河村晃生さん (慶應義塾大学名誉教授・文学博士)
連絡先:「東濃リニアを考える会」
fax 0573-69-4619  携帯 090-2688-4399
東濃リニアを考える会ブログ http://blog.goo.ne.jp/ookute3435


Linia_1
             地上でもコンクリートの壁に覆われます


Linia_2
              緩衝地帯が設けられず、民家のすぐ横を通ります


2013年5月 1日 (水)

長崎大学、戸田清先生からの手紙

長崎大学環境科学部の戸田 清先生からお手紙をいただきました。
原発についても造詣の深い科学者からのメッセージとして、非常に重要なものです。
:
戸田先生の略歴を紹介いたします。

職歴:日本消費者連盟勤務(1980年~1989年)
       
研究歴:都留文科大学非常勤講師などを経て長崎大学助教授、現在長崎大学教授
           社会学博士・獣医師(資格)

主要な研究業績:
1.『<核発電>を問う 3・11後の平和学』4冊目の単著、法律文化社、2012年1月
2.『唯物論研究年誌第16号 市場原理の呪縛を解く』唯物論研究協会編、大月書店、2011年10月
  「福島原発事故から見える日本資本主義の姿」(154-179頁)を執筆 など多数



核融合科学研究所についての私見

岐阜県土岐市の核融合科学研究所は

「核融合科学研究所は海水からエネルギーを取り出すための研究を行っています」というPDFファイル(28枚)

http://www.nifs.ac.jp/briefing/energy_12.pdf

の7頁で「燃料に必要な重水素とリチウム(三重水素の原料)は、海水中に豊富に含まれています。」と述べている。

同じく7頁で「核融合科学研究所では、三重水素(トリチウム)を使用した実験は行いません。」と述べている。

19頁で「実験に用いた重水素ガスの大部分は何も変わりませんが、ごく一部は、核融合反応を起こして、トリチウムと放射線を発生します。しかし、その割合は、使った重水素の0.01%以下です。」と述べている。

20頁で「発生したトリチウムは、トリチウム除去装置に導き、水の形で除去・回収した後、日本アイソトープ協会*に引き渡します。
放出ガス中の濃度は、法令基準の25分の1以下になります。」と述べている。

冒頭で「私たちは25-30年後の核融合エネルギーによる発電を目指しています」と述べている。

7頁に天秤の絵があり、重水素と三重水素がヘリウムと中性子になりエネルギーを放出することが説明されているので、やはりDT反応を目指していることがわかる。

考察

1.太陽の核融合はいわゆるPP連鎖反応が中心である。

陽子+陽子重水素+陽電子+ニュートリノ

重水素+陽子ヘリウム3+ガンマ線

ヘリウム3+ヘリウム3ヘリウム4+陽子+陽子

その太陽も数十億年後のヘリウム燃焼段階では「暴走」して赤色巨星となり地球を破壊してしまう。ただし人類の将来存続は幸運な場合でも1億年未満と思われるので「心配」は要らない。

宇宙船の船外活動をしている宇宙飛行士は、太陽フレアが激しくなると被曝を避けるために宇宙船の陰に隠れる。すなわち宇宙空間では今の太陽も十分に危険である。

人為的な核融合では水爆も、想定される核融合発電でもDT反応が中心となる。太陽の真似ができないからである。DT反応は

重水素+トリチウムヘリウム4+高速中性子+エネルギー

で、トリチウムを原料とする、高速中性子を生ずる点で「太陽より危険」である。原発の炉壁の劣化が20年ごとの交換を要するとすれば、核融合炉では毎年交換が必要らしい。

木村朗編『九州原発ゼロ48の視点』南方新社2013年所収の拙稿参照

2.原発は原爆開発の副産物にすぎないので(ウラン濃縮、再処理、原子炉の再活用)新たな発明を必要としなかった。核融合発電は水爆よりはるかに困難である。その水爆も「純粋水爆」(水爆として自立している)を人類はいまだ実現できず、いまの水爆は「原爆によって点火(起爆)する水爆」にすぎない。25年後から30年後に核融合発電が実現するとは、楽観的にもほどがある。

3.トリチウムを回収するとある。トリチウムで思い浮かぶのは

A 東電福島の汚染水でセシウムやストロンチウムは除去できるが、トリチウムは垂れ流しになるらしい。

B 六ヶ所の再処理工場でトリチウムは捕集できるのに垂れ流しにするらしい

C カナダや韓国のCANDU炉(カナダ式重水炉)でトリチウム汚染が問題になっているらしい。重水素が中性子を捕獲してトリチウムになるのであろう。

東電や日本原燃やカナダ原子力公社はなぜトリチウムを回収しないのか?

核融合科学研究所は本当にトリチウムを回収するのか? 週刊金曜日2013年4月5日号5頁によると、「トリチウムは95%が回収できる」と説明しているらしい。5%は垂れ流すのだろう。

トリチウムは放射性水素なので小さな隙間も通るし、核酸、タンパク質、炭水化物、脂肪などに組み込まれることもありうるので、大変危険なものである。

4.リチウムを原料にトリチウムを得るとはどういうことだろうか。

週刊金曜日2013年4月5日号5頁によると、核融合科学研究所は重水素とリチウムを衝突させ中性子とトリチウムが発生すると説明しているらしい。

ウィキペディアの「核融合炉」によると次の反応がある

重水素+リチウム6リチウム7+重水素+陽子

重水素+リチウム6ヘリウム4+トリチウム+陽子

重水素+リチウム6ヘリウム4+ヘリウム3+中性子

なお、リチウム6、リチウム7、ヘリウム3、ヘリウム4はすべて安定核種である。

5.「トリチウムを使用した実験は行ないません」というのは「DT反応の実験をしない」という意味だろう。たぶんしたくてもできないのだろう。

6.そもそも「核融合科学研究所」という名称がおかしい。英文名称NIFSにあわせて「国立核融合科学研究所」とすべきなのではないだろうか? 国立であること(国策であること)を隠したいのだろうか? 国立大学法人総合研究大学院大学核融合科学専攻も兼ねているので、旧帝大の核融合研究の院生も集まるのだろう。九州電力の広告塔として知られる毛利衛宇宙飛行士の前歴が「北大助教授、核融合専攻」であったことも想起される。

7.先週4月2日に安全協定を締結した4自治体は内容を理解しているのだろうか?

8.核融合の問題点を知るために槌田敦の諸論文の他に

荒川 『エネルギー 3つの鍵』北海道大学図書刊行会1996年 も参考になる。

2013年2月18日の小柴昌俊先生のお手紙のなかの「現在使われている核分裂の発電施設(もちろん原発のことです)から発生する中性子の10倍も高いエネルギーの中性子が出ることを防ぐ方法が全くないからです」という一文が決定的に重要です。


原発でも九電玄海1号や関電高浜1号のように中性子照射によって炉壁が劣化して脆性延性遷移温度が急上昇し、緊急時の冷水注入で圧力容器が破裂しないかと心配
されています。その10倍も大変だというのです。原発は数十年で炉壁の交換が必要だが、核融合炉(万一できるとして)では毎年交換が必要だとフランスの工学者が指摘するのも当然です。


なお中性子による金属材料の劣化については、原子力資料情報室を通じて井野博満先生(東京大学名誉教授)にお問い合わせください

戸田清 〒852-8521 長崎市文教町1-14 長崎大学環境科学部

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