核融合科学研究所へ見学に行きました
5月17日(金)、かねてから告知しておりましたように、核融合科学研究所へ見学に行ってまいりました。
60~80keVで重水素中性粒子ビームを1.5秒入射 = 中性子 2.9×10の10乗個(290億個)
となり、公表されている数値より小さくなったということです。
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5月17日(金)、かねてから告知しておりましたように、核融合科学研究所へ見学に行ってまいりました。
「核融合を考える友の会」が連休中の5月6日(月)に多治見と土岐でビラ配布を行いました。
2011年5月、国土交通省はJR東海に建設主体と営業主体を担わせる「中央リニア新幹線計画」を決定し、建設指示を出しました。
核融合科学研究所についての私見
岐阜県土岐市の核融合科学研究所は
「核融合科学研究所は海水からエネルギーを取り出すための研究を行っています」というPDFファイル(28枚)
http://www.nifs.ac.jp/briefing/energy_12.pdf
の7頁で「燃料に必要な重水素とリチウム(三重水素の原料)は、海水中に豊富に含まれています。」と述べている。
同じく7頁で「核融合科学研究所では、三重水素(トリチウム)を使用した実験は行いません。」と述べている。
19頁で「実験に用いた重水素ガスの大部分は何も変わりませんが、ごく一部は、核融合反応を起こして、トリチウムと放射線を発生します。しかし、その割合は、使った重水素の0.01%以下です。」と述べている。
20頁で「発生したトリチウムは、トリチウム除去装置に導き、水の形で除去・回収した後、日本アイソトープ協会*に引き渡します。
放出ガス中の濃度は、法令基準の25分の1以下になります。」と述べている。
冒頭で「私たちは25-30年後の核融合エネルギーによる発電を目指しています」と述べている。
7頁に天秤の絵があり、重水素と三重水素がヘリウムと中性子になりエネルギーを放出することが説明されているので、やはりDT反応を目指していることがわかる。
考察
1.太陽の核融合はいわゆるPP連鎖反応が中心である。
陽子+陽子→重水素+陽電子+ニュートリノ
重水素+陽子→ヘリウム3+ガンマ線
ヘリウム3+ヘリウム3→ヘリウム4+陽子+陽子
その太陽も数十億年後のヘリウム燃焼段階では「暴走」して赤色巨星となり地球を破壊してしまう。ただし人類の将来存続は幸運な場合でも1億年未満と思われるので「心配」は要らない。
宇宙船の船外活動をしている宇宙飛行士は、太陽フレアが激しくなると被曝を避けるために宇宙船の陰に隠れる。すなわち宇宙空間では今の太陽も十分に危険である。
人為的な核融合では水爆も、想定される核融合発電でもDT反応が中心となる。太陽の真似ができないからである。DT反応は
重水素+トリチウム→ヘリウム4+高速中性子+エネルギー
で、トリチウムを原料とする、高速中性子を生ずる点で「太陽より危険」である。原発の炉壁の劣化が20年ごとの交換を要するとすれば、核融合炉では毎年交換が必要らしい。
木村朗編『九州原発ゼロ48の視点』南方新社2013年所収の拙稿参照
2.原発は原爆開発の副産物にすぎないので(ウラン濃縮、再処理、原子炉の再活用)新たな発明を必要としなかった。核融合発電は水爆よりはるかに困難である。その水爆も「純粋水爆」(水爆として自立している)を人類はいまだ実現できず、いまの水爆は「原爆によって点火(起爆)する水爆」にすぎない。25年後から30年後に核融合発電が実現するとは、楽観的にもほどがある。
3.トリチウムを回収するとある。トリチウムで思い浮かぶのは
A 東電福島の汚染水でセシウムやストロンチウムは除去できるが、トリチウムは垂れ流しになるらしい。
B 六ヶ所の再処理工場でトリチウムは捕集できるのに垂れ流しにするらしい
C カナダや韓国のCANDU炉(カナダ式重水炉)でトリチウム汚染が問題になっているらしい。重水素が中性子を捕獲してトリチウムになるのであろう。
東電や日本原燃やカナダ原子力公社はなぜトリチウムを回収しないのか?
核融合科学研究所は本当にトリチウムを回収するのか? 週刊金曜日2013年4月5日号5頁によると、「トリチウムは95%が回収できる」と説明しているらしい。5%は垂れ流すのだろう。
トリチウムは放射性水素なので小さな隙間も通るし、核酸、タンパク質、炭水化物、脂肪などに組み込まれることもありうるので、大変危険なものである。
4.リチウムを原料にトリチウムを得るとはどういうことだろうか。
週刊金曜日2013年4月5日号5頁によると、核融合科学研究所は重水素とリチウムを衝突させ中性子とトリチウムが発生すると説明しているらしい。
ウィキペディアの「核融合炉」によると次の反応がある
重水素+リチウム6→リチウム7+重水素+陽子
重水素+リチウム6→ヘリウム4+トリチウム+陽子
重水素+リチウム6→ヘリウム4+ヘリウム3+中性子
なお、リチウム6、リチウム7、ヘリウム3、ヘリウム4はすべて安定核種である。
5.「トリチウムを使用した実験は行ないません」というのは「DT反応の実験をしない」という意味だろう。たぶんしたくてもできないのだろう。
6.そもそも「核融合科学研究所」という名称がおかしい。英文名称NIFSにあわせて「国立核融合科学研究所」とすべきなのではないだろうか? 国立であること(国策であること)を隠したいのだろうか? 国立大学法人総合研究大学院大学核融合科学専攻も兼ねているので、旧帝大の核融合研究の院生も集まるのだろう。九州電力の広告塔として知られる毛利衛宇宙飛行士の前歴が「北大助教授、核融合専攻」であったことも想起される。
7.先週4月2日に安全協定を締結した4自治体は内容を理解しているのだろうか?
8.核融合の問題点を知るために槌田敦の諸論文の他に
荒川 泓『エネルギー 3つの鍵』北海道大学図書刊行会1996年 も参考になる。
2013年2月18日の小柴昌俊先生のお手紙のなかの「現在使われている核分裂の発電施設(もちろん原発のことです)から発生する中性子の10倍も高いエネルギーの中性子が出ることを防ぐ方法が全くないからです」という一文が決定的に重要です。
原発でも九電玄海1号や関電高浜1号のように中性子照射によって炉壁が劣化して脆性延性遷移温度が急上昇し、緊急時の冷水注入で圧力容器が破裂しないかと心配されています。その10倍も大変だというのです。原発は数十年で炉壁の交換が必要だが、核融合炉(万一できるとして)では毎年交換が必要だとフランスの工学者が指摘するのも当然です。
なお中性子による金属材料の劣化については、原子力資料情報室を通じて井野博満先生(東京大学名誉教授)にお問い合わせください
戸田清 〒852-8521 長崎市文教町1-14 長崎大学環境科学部
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